私の彼氏はクラスで一番、



教科書、よし。ペンケース、よし。財布に飲み物、パスケースも。


トートバッグの中身を一通り確認してから、外に出る。駅までの道中で手土産を買いながら、待ち合わせ場所へと向かった。


良く晴れた土曜日のお昼前。

待ち合わせ場所は、学校の最寄り駅だ。


お母さんには友達と勉強する、としか言わずに出てきた。

特に何も言われなかったけれど、私は一人でドキドキしながら小走りで歩く。何も悪いことはしていないのだけど、どこか後ろめたくて。


(緊張してきた……)


学校までと同じ道のりだから迷うことも無く、目印の時計台の前に立つ。


ふう、とひとつ息をついてから、そうだ、阿久津くんに着いたよって連絡を、とスマホをバッグから取り出した時。


「山本」


ふと手元に影が落ちて、顔を上げると私服姿の阿久津くんが立っていた。


すぐに会えたことにホッとしながら、スマホをしまう。


「阿久津くん、おはよう! よかった、今丁度連絡しようとしてたところで……」

「ん、おはよ」

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