私の彼氏はクラスで一番、
わたわたと落ち着きない私にふっ、と小さく笑いながら、阿久津くんがこちらへ手を差し出す。
「……?」
阿久津くんの顔と、出された手を交互に見ながら首を傾げ──ポスっと自分の右手を乗せると、セピアの瞳が驚きに瞬いた。
そして、バッと勢いよく顔を逸らされる。
「ん゛んっ……。いや、そっちじゃなくて……」
「えっ」
「いやっ、間違っては無い! 間違っては無いけど……。荷物、嫌じゃ無ければ俺に持たせて」
ね、ともう一方の手を伸ばされ、戸惑いながらも、その手に促されるように肩に掛けていたトートバッグを渡す。
いいのかな、そんなに重いわけでも無いのに……。
そう思ったけれど、こちらに微笑んだ阿久津くんの表情が優しくて、どこか嬉しそうで。私はそれ以上何も言えず、ふたり手を繋いだまま、歩き始めた。
ぽつぽつと世間話をしながら歩くこと、十分。
閑静な住宅街の一角に、彼の家はあった。クリーム色の壁を基調とした、小さな庭つきの一軒家だ。