私の彼氏はクラスで一番、


そして。


(腕も塗り終わってしまった……けど)


腕を組んで、阿久津くんの背中を睨むように見つめながら黙り込む。


残るは下……と、前……。


「山本?」


私が突然動かなくなってしまったせいか、怪訝そうに声をかけられ、ドキッとする。


「う、うん」


返事したのはいいものの……。


「阿久津くん」

「うん?」

「あとは自分で塗れる、よね?」


ね、と日焼け止めを差し出してみる。

だけど阿久津くんは一向に手を伸ばさず、何も言わず私を見上げた。


「……」

「……」


上目遣いがかわい……! って、そうじゃなくて!


阿久津くんの目力には、どうにも敵わない。

私は仕方なく膝立ちで阿久津くんの前に回り、ちょこんと座った。


「し、失礼します」


恐る恐る、鎖骨の辺りに触れる。尖った喉仏が、こくりと上下した。


こんなにひらけた場所にいて、辺りの喧騒も聞こえるのに、二人、狭い部屋に閉じ込められているみたいだった。


夏を孕んだ熱気が二人の間で篭り、お互いの吐息が耳の奥で響く。


「……ッ、」


素肌に触れる指先がじわじわ発火して、耳の端っこまで熱くて仕方が無かった。

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