私の彼氏はクラスで一番、

何を……?

眉を下げて見上げると、唇をキュッと引き結んだ阿久津くんと目が合う。

日陰を抜け出し、太陽に照らされた阿久津くんの頬が、ほんのりと桃色に染まっていた。


「あ……」

「もう、見んな」


どこか怒ったような、拗ねたような珍しい表情。

だけどすぐに、目の前が真っ暗になって見えなくなってしまった。代わりに、温かい手のひらの温度が瞼から伝わってくる。


「はあ……」


暫くして、ゆっくりと私の目を覆っていた手が離れていった。


「ごめん。行こう」


そう申し訳なさそうに謝ってくれたけど、私はもう、避けられたことも、怒ったような顔も、気にしていなかった。

だってそれ以上に、赤らんだ頬が、拗ねた瞳が、可愛くて。


「う、うん」


突然襲ってきたトキメキに、頬が火照ってしょうがなかったから。

手を引かれて連れられた先で、暫くは波打ち際で遊んだり、砂遊びをしたり、濡れた砂浜に足を埋めて遊んでみたり……。

道具も何も無い、子供っぽい遊びだったけど、すごく楽しかった。

手を繋ぎながら、波で足を遊ばせて微笑み合ったり。二人で作った砂のお城が波に攫われてしまって、二人顔を見合わせて大笑いしたり。

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