私の彼氏はクラスで一番、
「次はこれ使お」
無事にお腹が満たされ、波打ち際に戻ってきたところで阿久津くんが掲げたのは浮き輪だった。
阿久津くんが私のために買ってくれたであろうドーナツ柄の浮き輪で、いちごチョコをイメージしたピンク色が可愛い。
そういえば確かに、さっきは一回も使わなかったもんなあ。
こくんと頷きながらも、浮き輪も実は使ったことがなくて、どうすればいいのか分からない。
とりあえず頭からすぽんと被ればいいのかな? そう考えているうちに、阿久津くんは浮き輪を水面に浮かべた。
「山本、おいで」
こっち、と手招かれて駆け寄ると、大きな手のひらがぽんと浮き輪を叩く。
「ここ座って。ちゃんと俺が掴んでるから」
「えっ、いいの?」
「うん」
阿久津くんの言葉に甘えて、真ん中に腰とお尻をはめるように座る。
ほとんど身動きが取れなくなったけど、阿久津くんが浮き輪を固定してくれているから不安はなかった。
「このまま、ちょっと進むよ」
そう言って、阿久津くんが迷うことなく沖へ進む。
ぐんぐん、すいすい。進むごとに指先に触れる水温が冷えていき、やがて水面が彼の胸あたりまでくると、そこは海辺の喧騒が嘘のように静かな世界だった。
「はぁ……」
思わず、うっとりとしたため息が漏れ出てしまう。
雲ひとつない青空に、キラキラと光を乱反射する水面。