私の彼氏はクラスで一番、
日常の世界から切り離されたみたい。海ってこんなに綺麗だったんだなあ。
「疲れた?」
「ううん、綺麗だなあと思って……」
ぼんやりしたまま応えると、阿久津くんは微笑んだ。
そして、私の脚に水を掬ってかけてくれる。そのひんやりとした気持ちよさについ微睡みかけて──ハッとした。
「というかごめんね!? 私ばっかり楽しんじゃって……!」
私は浮き輪に座ってプカプカ浮いてるだけで、阿久津くんが至れり尽くせりで私のお世話をしているようなもんだ。
だけど阿久津くんは、キョトンと首を傾げた。
「なんで? 俺も楽しいけど」
「ええ……私のお世話してるだけなのに?」
「こんなのお世話のうちに入らないでしょ。それも楽しいし……というか」
するり、後ろから阿久津くんの腕が伸びてきて、ドキッとする。振り向くより先に、顔のすぐ横に阿久津くんの気配を感じて、動けなくなってしまった。
「俺、これでも結構舞い上がってるんだけど、気づいてない?」
耳元で囁かれて、もうブンブンと首を左右に振るしか無い。
口を開いたら心臓が飛び出してきてしまいそうで、声は出せなかった。