私の彼氏はクラスで一番、
じ、と息を潜めながら、阿久津くんからの視線を頭の後ろに感じていると「そっか」と呟きが落ちてくる。
「まあ、でも……」
「!?」
ぴとり。逞しい胸板が、私の背中にくっついてしまうほど二人の距離が無くなって、吐息がさらに近くなった。
ぐ、と体重をかけられて、戸惑っているうちに阿久津くんの指先が上着のジッパーを辿るように、引き手をつまむ。
「これ、ずっと着てる」
「う……」
「見せてくれないの?」
午前中から一度も脱いでないラッシュガード。
何も言われないのをいいことにそのままにしていたけど、やっぱり気になってたか……。
「き、気にしてないのかと思ってた」
素直に言うと、阿久津くんは一瞬だけ言葉に詰まったようだった。
「葛藤してたんだよ……」
「葛藤?」
「見たいけど、見せたくないから。でも今なら、俺しか見てない」
つまんだ指先が、布の下を暴こうと僅かに引っ張られる。
ほんの少し下げられただけ。水着は一ミリも見えてないけれど、息を呑んで慌てる私に、阿久津くんはトドメを刺した。
「下げていい?」
伺いを立てているようで、意思の強い囁き。
お腹の奥に響くような声を落とされ、私はもう、頷くしか無かった。