私の彼氏はクラスで一番、



「ありがとう……」


水着、高かったけど買ってよかったな。

絞り出すように押し出したお礼の言葉は、蚊の鳴くような小ささになってしまった。

それからしばらく沖の方で遊んで、そろそろ戻ろうか、というところで、ラッシュガードは阿久津くんの手によってまた一番上まできっちり閉められた。

もう慣れちゃっていたから、なんなら脱いでも良かったくらいだったんだけどな、なんて思っていると、阿久津くんがムスッとした顔で私を見下ろしてくる。


「見せたくない、って言ったの忘れた? 可愛すぎるから、他の男の前では絶対見せないで」


まるで、私の心を読んだかのようなタイミングだ。

私のことなんか見てる人、いないと思うけどなあ。
頬を赤らめながらも苦笑する私を、阿久津くんは暫く睨んでいた。







「山本、楽しかった?」

「えっ!?」


尋ねられたのは、帰路に着く電車の中。

楽しかったなあ、あっという間だったなあと寂しく思いながらぼんやり窓の外を見ていた私は、つい大きな声を出して驚いてしまった。

パッと慌てて両手で口を塞ぎ辺りを見回す。幸いなことに車両は空いていて、誰もこっちを見てなかった。

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