私の彼氏はクラスで一番、


「分かった? 俺の好きな人」

「えっ、いや」

「わかんない?」


私の戸惑いなんて気にもせず、まるで逃げ道を塞ぐように追い詰めてくる。


こんなイケメンでも恋に悩んだりするんだなあ、なんて能天気に話を聞いていたのに、いつの間にか急展開を迎えていた。


正直、ここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。しかし、握られた指先がそれを赦してくれない。


「ちょ、あの、ちょっと、待ってほしい、です」

「何を」

「何ってその……それは分からないけど……っ」



とにかく落ち着く時間が欲しい。現状の整理をする時間が。


でも、彼はいじわるで。


「嘘」


唇の端を吊り上げ、頬杖を解いた彼が、人差し指で私の頬をつつく。切れ長の瞳にどこか妖しい笑みが浮かんだ。


「顔真っ赤。全部分かってますって顔してる」

「う……」


違う。分かってる、わけじゃなくて。


今の話の流れだと、どうしたって、もしかして? なんて自惚れた考えが芽生えてしまう。


でもそんなはずない。


芽生えた仮説を受け入れられるほど、彼との接点は多くない。


ただ、同じクラスで、偶然同じ委員会になった、本来ならばきっと、こんな風に喋ることも無かったであろう、男の子。


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