私の彼氏はクラスで一番、


私も、寂しかった。

だからもう少し一緒に居られるんだと思うと、嬉しくて。

数駅越えたところで、私の最寄り駅に到着する。

阿久津くんはスっと立ち上がると、自然に私へと手を差し出してきた。私もちょっと照れながら、手を重ねるように繋ぐ。


「誕生日、またちゃんとお祝いし直したい」


すっかり暗くなった住宅街を歩いてる最中、電車の中でずっと考えていたことを伝えると、阿久津くんは苦笑した。


「いいんだって。もう沢山貰ったから」

「何もあげてないよ」

「貰ってる。一日、ずっと一緒に居てもらったし……それこそ、水着姿も見れたし」


恋人の誕生日に一緒にいるなんて、付き合ってるなら普通のことじゃないのかな。水着姿うんぬんは……ともかくとして。

納得がいかない様子の私を阿久津くんは横目で見て、やがて、ふっ、と噴き出すみたいに笑った。


「ごめん、山本が俺のことで頭いっぱいなのが、嬉しくて」


顔を上げた私が何かを言うよりも先に、弁明される。

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