私の彼氏はクラスで一番、
「ほんと、誕生日のことは気にしないで」
「……じゃあ、阿久津くんも私の誕生日は気にしないでね」
「いや、俺はもう知ってますから」
「えっ!?」
思いもしない返答だった。言われてみれば誕生日の情報交換なんかしてないもんなあ、なんて考えていたのに。
目を丸くする私に、阿久津くんは悪戯っぽく目をしならせる。
「好きな子のことですから。去年からリサーチ済み」
何も言い返せなかった。
それどころか、ほんとうに前から私のこと好きだったんだ、なんて解らされてしまって、顔が熱くなる。
「でもほんと、そうやって俺のこと考えてくれるだけで嬉しいよ。……ずっとそのまま、俺でいっぱいになればいいのに」
後半は呟くように言われ、私はきゅ、と下唇を噛んだ。そして、つい繋いだ手に力を込めてしまいながら、阿久津くんの目を真っ直ぐ見上げる。
「わ、わりといっぱい……だよ」
夏休みに入ってからも、ずっと阿久津くんの連絡を待っていたもの。
自分からは行動を起こせなくて、でも、デートの文字がずっと頭に残っていて。
今日の約束が決まってからも、何着ていこうかな、とか、何が必要かな、とか、この日のことを沢山考えていた。
「阿久津くんが思ってるよりもたくさん……阿久津くんのこと、考えてる自信、ある」