私の彼氏はクラスで一番、
「おしえて」
普段、教室で過ごしている阿久津くんからは想像もつかないような、とろけた声。
ぐう、と言葉に詰まる私を慈しむように見つめながら、それでも逃がす気は無いみたいだった。
やがて、観念してぽつりと呟く。
「ど、どきどきしちゃうから」
今も。
ぴったりとくっつく左半身が、熱くて仕方ない。
「ふうん」
聴覚も、視覚も、触覚も。
ぜんぶ彼に支配されて、だからせめて、ひとつだけでも逃れられればと目を固く瞑る。
「ドキドキするのは、どうして?」
だけど追及の矢は止まらない。
なんで、どうして、って、ひとつひとつを丁寧に暴くみたいに。
しまいには、私が答えられないでいると、丸い爪先で擽るように私の手のひらをなぞり始めた。
それがこそばゆくて、恥ずかしくて。
折角視覚をシャットアウトしたのに、その分触れられる感覚を敏感に感じ取ってしまって、目を閉じたのは逆効果だったかも──なんて、もう遅い。
「……ッ、か、かっこいいから!」
黙れば黙るほど窮地に追いやられてしまい、最終的には悲鳴混じりで白状した。