ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜

風変わりな賢者


 グロムス砦は、ミーリア王国の西の国境の守りで、王国と西方の国々とを繋ぐ「西街道」を扼する位置に建っている。

 正確に言うと、砦自体が西街道を取り込むように造られていて、他国の軍が王国に攻め入ろうとするのなら、砦を落さないことには軍を展開できないのだった。

 私たちはギラン将軍を先頭に、砦への道を急いだ。 

 すると──。

「敵襲!!」

 兵の叫び声とともに、空から矢が夕立のように降り注ぎ、街道脇の岩や木々の陰から、一斉に甲冑姿の兵たちが沸き立った。

「退けっ、退けい!!」

 ギラン将軍の叫び声で、味方の兵は街道を逆方向へ駆け始めた。
 この街道は王都まで伸びていて、そこには王宮があり、国王陛下がみえる。
 敵兵が喚声を上げながら、退却するギラン将軍に迫ってくる──。

 だが、その時だった。

 一瞬空が陰ったかと思うと、今度は敵兵に向けて先程の倍の勢いで矢の雨が降り注ぎ始めた。
 そして足並みを乱す敵の後ろで、ミーリア軍の旗が林のように立てられた。

「突撃っ、一人も逃がすな!!」

 深紅の甲冑を煌めかせたレイアを先頭に、味方の騎馬隊がロズモンド軍の後方を(えぐ)った。

「今だっ、者ども遅れるでない!!」

 そして正面では、ギラン将軍の率いる兵が槍先を揃えて、逆襲に転じていた。

 敵は、大混乱に陥った。
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