ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜

「姫君様、私から離れないでください」

 ベルナルドが言った。口調が落ち着いていたのは、私を不安がらせないためだったのかもしれない。

「さすがにあれだけの数を、私一人の魔法で撃ち落とすことはできません。いざとなればこの丘に『障壁の魔法』をかけて、姫君様をお守りいたします」

「そんな……、他の者はどうなるのです?!」

 今、私の眼の前で王国のために戦っている、レイアは、ギラン将軍は、ゲンジは、他の兵たちは──。

 戦場の喚声が急に遠く感じられて、私は一人ぼっちで放り出されたようで、急に目眩(めまい)を感じた。

 何もできない。
 皆を励ましたいと願ってこの行軍に参加したのに。私には皆が傷付き、倒れていく様を、指を咥えて眺めていることしかできない──。

 神さま、私はなぜこんなにも非力でちっぽけなのですか? 一国の王女の身でありながら、兵や大切な仲間たちを守るどころか、自分自身を守ることすらままならない。
 私は、皆を守りたいのに──!!

 空を埋め尽くすようなガーゴイルの大群を見つめながら、私は恐れより、悔しさと悲しさで泣き出しそうだった。

 でも、その時だった。
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