ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜
「それにしても、これからが大変ですぞ」
ベルナルドの言葉に、私の左横に馬を並べるレイアが口を開いた。
「諸王国の使者がミーリアに来るのね」
「さすがレイア殿。その若さで騎士長を務められるだけはある」
ベルナルドの軽口に嫌そうな顔をするレイアに、私は訊いた。
「どういうことなの、レイア?」
レイアはやれやれ、と溜め息をついて、
「諸王国の連合軍ですら止められなかったロズモンド軍に、私たちは勝った。ロズモンドの侵略に怯える国々や、ロズモンドに復讐を企てる国々は、当然ミーリアとの友誼を求めてくるでしょう」
「あ……」
そんなことも分からなかったの? という、レイアの心の声が聞こえた気がした。
「それだけでは済まされないでしょう」
ベルナルドがのんびりと言った。
「姫君様におかれましては、大いなる光の女神の御加護を受けておいでだ。今回の戦、諸王国は姫君様の『癒しの風』がロズモンドと異形どもを退けたと、そう思っているでしょう」
「それが、どうしたっていうの?」
レイアが苛立って言った。
「諸王国はミーリア軍の力というより、姫君様の御身を手許に置くことを考えるはずです。つまり──」
ベルナルドは、私が夢にも思わなかったことを口にした。
「諸王国の適齢な王子や有力諸侯の貴公子たちが、一斉に姫君様との婚姻を求めて王都に押し寄せるでしょう。既に王宮の控えの間は、諸王国の王子や貴公子たちで溢れかえっているかもしれませんぞ」