ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜
お昼の会食を終えて自室に下がっていた私に、侍女がうわずった声で伝えた。
「騎士長さまがお越しです」
「レイアが?」
いきなりなんだろう。
私が「いいわ、お通しして」と伝えたのと同時に、部屋の扉が乱暴に開かれて、剣を帯びた平服姿のレイアが入ってきた。
「リアナ、大変よ」
「一体どうしたの、レイア?」
「密使が到着したの、ロズモンドの王太子から」
半刻後、謁見の間で私たちは、右半面を白布で覆ったロズモンドの騎士と相対した。
この騎士は、ここに来る道中で魔物に襲われ、酷い手傷を負っていたそうだ。
それでも、
「ミーリアの国王陛下に、至急お伝えすることがございます」
と、荒い息をしながら訴えたのだ。
謁見の間には国王陛下とお妃さまだけではなく、諸王国の王子や貴公子、使節として来ていた重臣たちも列席した。
私はミーリア王家の一員として、お父さまとお母さまに並んで腰掛けていた。私の左後ろには、ベルナルドとゲンジも並んで立った。
突然の出来事にざわついた空気の中、跪いたロズモンドの騎士は、口を開いた。
「ミーリア国王陛下に申し上げます。私はロズモンド王国王太子、レオン殿下にお仕えする者。レオン殿下からのご伝言を、お届けに罷り越しました」
「ご使者よ、遠路はるばるご苦労であった。してロズモンドの王太子どのは、交戦中の我が国に、どのようなお言葉をくだされたのかな?」
お父さまの言葉に、傷付いた使者は顔を上げ、答えた。
「状況を顧みず申し上げます。わが主レオンはただ今父王に命を狙われ、ロズモンドの北辺の砦に立て籠もっております。どうかこの身を救い出してほしいとの、我が主から陛下へのお願いでございます」