ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜

 レオン王太子を救出するか否か、諸王国からの列席者を含めた会議は、紛糾した。

「これは罠でありましょう。救援に出向いたミーリア軍を道中で待ち伏せするつもりに違いありません」

「大体、その使者が本物だという証拠はあるのですか?」

「文書官の鑑定では、文書には間違いなく
ロズモンド王太子の印が押されていたそうだ。偽造とは考えられないと」

 お父さまの説明にも、列席者の反対意見は止まなかった。

「印が真正でも、話も真実であるとは限りますまい。腹黒いロズモンドのこと、親子二人で我々を(たばか)ろうとしているのであろう」

「よしんばその王太子の話が真実でも、言い換えれば敵が勝手に同士討ちをしているだけのこと。我等にしてみれば、もっけの幸いというものではないですか」

 私は高貴な人々の口さがない声を聞きながら、だんだん悲しくなってきた。
 この方々は自分のことは助けてほしいと訴えるのに、ロズモンドの王太子の訴えは無視するのだろうか──。

「ベルナルド、貴方はどう思います?」

 私の問に、ベルナルドはちらりとお父さまに視線を投げた。お父さまが小さく頷くのを見て、この銀髪の魔導師は一歩前に出て、口を開いた。

「リアナ妃殿下の意を受け、皆様に申し上げます。これは千載一遇の好機、速やかに救援を差し向けるべきかと存じます」

 ベルナルドの大胆な発言に、列席の王子、貴公子たちは騒然となった。
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