ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜
遠征
潜入
きらきらとした王子や貴公子たちは、お互いの顔を見合わせるだけで、「行く」とも「行かない」とも、声をあげる人はいなかった。
使者たちからも、「一度持ち帰って皆で検討いたします」という声があがっただけだった。
お父さまは大変落胆されて、それでも穏やかな口調で、
「急なことで皆も戸惑っていよう。一旦散開とするゆえ、あらためて各々で考えていただきたい」
と仰って、会議を閉じた。
でも、
「リアナ、レイア。それにご両者も。今しばらく時間をいただけないか」
そう仰って、私たちを別室に誘った。
従者によって部屋の扉が閉じられると、お父さまは私に、
「リアナ、そう落胆するでない。ご列席の方々にも事情というものがあろう」
そう優しく諭される。
でもレイアは憤然として、
「しかし我が国が征くと宣言しているのに、同行の声すら上がらないとは……」
そう言い捨てた。
皆の空気が重くなってしまった。──一人を除いて。
「ベルナルド、何か手立てがあるのですか?」
一人だけ変わった様子のないベルナルドに、私は声をかけた。
「予想通りです。何も問題はありません」
私たちは驚いたけど、ゲンジには心当たりがあるのか、ベルナルドの言葉にも特に表情を変えていない。
「お話いただけるか、軍師殿」
お父さまに促されて、ベルナルドは説明を始めた。