ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜
それからさらに二日、私たちはファガル平原で同行する諸王国の軍勢を待ち、皆が揃ったことを確認したうえで出発した。
集まってくれたのは、アルブレヒト王子のヴォスタル王国とヒサーヌ王子のシュクラン王国、それにウォラス王国とラマン共和国、それに南部都市同盟の傭兵隊も参加してくれた。
それぞれが5千の兵を率いて来てくれたので、ミーリア兵の5千も加えて、総勢3万の軍勢になる。
「これで充分でしょう。ロズモンドの注意を引くのに、多からず、少なからず。ただ……」
ベルナルドは形の良い顎を撫でながら、思案げな顔をした。
「何か気になるのですか?」
「予想外に有能な将が来てしまいました。件の『ばか王子』たちはともかく、彼らには作戦の真相を話しておいた方がよさそうです」
ベルナルドがそう言ったのは、ウォラス王国のリヴァイ王子と、南部都市同盟に雇われた、傭兵隊長ドーリア卿だった。
「どちらもロズモンド軍をあと一歩まで追い詰めた、優れた将です。ラマン共和国のハヴェル卿の事はよく存じませんが、リヴァイ王子と懇意ということならば、やはりひとかどの人物と考えた方がよろしいでしょう」
「話を聞いた彼らが、腹を立てて離脱する可能性は?」
レイアの疑問に答えたのは、ゲンジだった。
「それは無かろう。その程度の短気な御仁に、ああも見事な軍を率いることはできぬ」
ゲンジの言うとおり、ウォラス軍、ラマン軍、都市同盟軍の兵士たちからは、戦に疎い私でもたじろぐほどのオーラが伝わってくる。
アルブレヒト王子のヴォスタル軍、ヒサーヌ王子のシュクラン軍の兵士たちとは大違いだ。
「キリカ。ラマンのハヴェル卿は如何なる御方だ?」
ゲンジの急な問いかけに、キリカさんは当然のように答えた。
「思慮深い御方と見ました。勇をあらわにする型ではありませんが、卒なく兵を操り、粘り強い戦い方をする」
「なるほど、頼むに足るな」
「キリカさんは、ハヴェル卿にお会いしたのですか?!」
びっくりして、そう訊いてしまった。