ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜
すると、天幕の入口から声がした。
「リヴァイ王子、感謝いたします」
ちょうど御簾を引き上げて、ベルナルドとゲンジが入って来るところだった。
「ベルナルド! ゲンジ!」
二人が戻ってくれただけで、やっと自分の居場所に戻れた気がする。二人には、数刻会わなかっただけなのに。
「『ばか王子』たちはどちらへ?」
ベルナルドの問いに答えてくれたのは、ハヴェル卿だった。
「アルブレヒト王子とヒサーヌ王子なら、リヴァイに外へ追い出されました」
「連中なら俺の恋愛指南に感激して、涙を拭きながら出ていったぜ。よっぽど嬉しかったんだろうな」
そんなリヴァイ王子をハヴェル卿が困った顔で眺める向こうで、ベルナルドが説明してくれた。
「実は、リヴァイ王子が言い出されたのです」
私がアルブレヒト王子とヒサーヌ王子をお茶にお誘いしている間、ベルナルドとゲンジはリヴァイ王子、ハヴェル卿、ドーリア卿に今回の遠征の真意を説明していてくれたのだけど、リヴァイ王子は私が二人の王子の相手をして時間を稼いでいることを知ると、
「そりゃいけねえ。すぐに姫さんを助けに行こうぜ」
と、ベルナルドの説明もそこそこに、三人でわざわざ私の天幕に来てくれたのだ。
「ベルナルド、と言ったか。だいたいあんた、姫さんを働かせ過ぎだぜ」
リヴァイ王子は口を尖らせた。
「この間の姫さんの『小芝居』といい、策の当否はともかくこんなにこき使われたんじゃ、姫さんが可哀想だ」
私は「いいんです」と声をかけようとしたのだけど、その前に、
「そう! 本当にその通り!」
レイアが声を上げて大きく頷いていた。
でもすぐに、慌てて口に手を当てて、
「あ、あの……、失礼致しました」
真っ赤になったレイアに、リヴァイ王子が明るく話しかけてくれる。
「元気な騎士殿だな。いいぜ、あんたも気に入った」
そして横に並ぶハヴェル卿とドーリア卿に声をかけた。
「別に構わねえよな、ハヴェル、おっさん」
ドーリア卿が、おほん、と咳払いした。
「どう呼ばれようと構わぬが、おっさん呼ばわりは止めてくれぬか、リヴァイ。ただ──」
ドーリア卿は厳しい顔を緩めて、私たちにこう告げてくれた。
「リアナ王女。リヴァイの言うとおり、以降我らには気遣い無用。なんなりとお指図くだされよ」