ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜
隊列も整わないまま、当たるを幸いに剣を振り回していたアルブレヒト王子とヒサーヌ王子の先鋒軍は、気がつけば左右を急進してきたロズモンドの軽騎兵に囲まれていた。
ロズモンドの軽騎兵は急に接近すると矢を放ち、くるりと馬頭をめぐらせて距離を取る。
挑発に乗ったアルブレヒト王子たちは、軽騎兵を追って横に広く、縦に薄く散開し始めた。
宝珠越しにその様子を眺めていたレイアとゲンジが同時に舌打ちして、キリカさんまでもが緩く息を吐き出した。
そしてベルナルドが、冷えた声で呟いた。
「終わりましたな」
戦場の先に土煙が上がったかと思うと、今までロズモンド軍の前線を支えていた装甲兵たちの列が割れて、その先からロズモンドの主力、重槍騎兵たちが槍先を揃えて突撃してきた。
アルブレヒト王子のヴォスタル王国軍と、ヒサーヌ王子のシュクラン王国軍はたちまち、貫かれ、引き裂かれ、粉々に打ち砕かれた。
なんとか重槍騎兵たちの槍先から逃れた兵たちは、剣を投げ出して我先に森の中へ逃げ込んでいった。