嘘の香り・誰かのための嘘であれ ~Cruzar Another story 4/5~
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数日後の夜。
「昨日病院行ったんだろ?どうだった?」
「ああ~病院ね。」
真には心配掛けたくない。
本当のことを言ったら、絶対悲しい顔をさせてしまうから…
「大丈夫だったよ。なんも問題ないって。最近、寝不足だっ…か、ら…だ、おも…」
「彩歌?…どうした!?」
「こ、え…」
声が出ない…
声が…
こんな時に、あの時の記憶が甦ってきた。
卒業を目前にした、高校3年の2月の昼休み
、教室でのこと。
豪君が声が出なくなった時のこと。
あの時も、真はうちのクラスに遊びに来てたっけ…
あれ?
真、教室のどこにいた?
そうだ…
『言っとくけど、俺は言ってないからな。あいつらがさ言ってたんだよ。お前の…こ
、と…』
背を向ける豪君が喉を抑え、腰を屈め…
その向こうに立っていたのは、真だった。