嘘の香り・誰かのための嘘であれ ~Cruzar Another story 4/5~
真side
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肩を揺すられ、目を覚ました。
『風邪引くよ。』
ベッドから上体を上げた彩歌が、手話で注意する。
いつの間にか、病室の彩歌のベッドに頭を預け寝てしまったらしい。
擦った目に、ベッドに付けられたテーブルの上に置かれたパソコンが映る。
今も再生回数が延び続ける彼女の歌…
「ごめん、昨日帰ってくるの遅くてさ、あんま寝てないんだ。」
『大塚さんの仕事?』
「そう。あっ、でも、危険な仕事じゃないからさ。」
そう、危険じゃなかった。
嘘の香りが分かる俺だけの仕事。
ただ、無差別殺傷事件の犯人が嘘を吐いているか確認するだけの仕事だ。