猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
「柳沢くん、今からどこ回る?」
せっかくの文化祭。この空き部屋で時間を潰していては時間がもったいない。
私はもう一通り見て来た後だけど、柳沢くんはまだほとんど何も見られていないはず。
「私のおすすめは──」
「いい」
「え?」
「しばらくここで、ハスとふたりでいたい」
ふざけた調子ではなくて、むしろ「断られたらどうしよう」という不安すらにじませた声だった。
「あ、そっか。疲れてるって言ってたね。いいよ、しばらく休んでからにしよっか」
「ん」
「飲み物とか買ってこようか?」
「いらない。ここにいて」
そんな風に言われたらそうするしかないじゃん。
私は「わかった」とうなずいて、無造作に置かれた椅子の一つに腰かける。
黙っていても退屈なので、午前中のことを話すことにした。
「私ね、三年生のお化け屋敷行ってきたんだ」
「ハス、ホラー系は得意な方だっけ?」
「ううん苦手。物理攻撃の効かない得体の知れないものは普通に怖い」
「その割によく入ろうと思ったね」