猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
柳沢くんが手を伸ばし、私の頬に触れた。
いつだったっけ──そうだ、柳沢くんの家でテスト勉強をしていたとき。
あの日の雰囲気と似ている、と感じた。
「人のどす黒い部分を受け入れて、白い感情を作り出す。しかも意識してやっているわけじゃない。それがさも当然のことであるように、醜い泥を受け入れる」
触れられている部分がじわじわと熱くなってくる感じがする。
「俺はそんなハスのことが……好きだ」
「そんなに好きなの、蓮の花?」という言葉を、ギリギリで飲み込んだ。
蓮の花が好き──と言っているわけではないのは、さすがに理解できた。
ただ、理解はできたけど消化はできなかった。
「っ、やだなあ柳沢くん。こんな二人きりのところでカップルの演技しても意味ないよ」
「本気で言ってるのわかってるくせに」
「わかんない。演技でしょ?ねえ、いつもみたいに私のことからかって楽しんでるんでしょ?」
「そう思うなら、何でそんな顔してるわけ?」