猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



「柳沢くんっ、誰もいないのに恋人のフリしなくても……あ」


「……ったく、また忘れてたわけ?」




そうだ、今の私たちは“偽装カップル”じゃない。

お試し期間とはいえ、一応付き合ってるんだ。



──という感じの一連の流れを、あれから数日経つけど、幾度となく繰り返している。



私はふうっと息を吐いて、繋がれた手をぎゅっと握り返した。




「考えてみたら、前に映画館デートした時もこうやって手繋いだね」


「ああ、そういえば。正直、手を繋いだことよりハッカ飴渡されたことの方が記憶に残ってるけど」




……それ忘れてもよかったのに。

良いじゃん美味しいんだもんハッカ飴。




「まあ俺は、ハスのそういうマイペースな部分も好きだけどね」


「なっ」




サラリと言われて思わず顔が熱くなる。

皆の前でカップルアピールをする時の、キラキラ王子様モードとはまた違う。

作った甘ったるい声ではなく、あくまで自然体な柳沢くんのままそんなことを言ってくる。



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