猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



そう微笑みを浮かべて言った茉莉花ちゃんだったけど、顔を上げてその表情が固まった。




「え……」




その原因が、柳沢くんの顔を見たからだということはすぐにわかった。

何故なら、柳沢くんもまた茉莉花ちゃんに気付いて顔を強張らせていたから。




「マリカ……?」


「かな、くん……」




何かを堪えるような、辛そうな顔をする柳沢くん。

こんな険しい表情をしているのは初めて見た。



一方で茉莉花ちゃんは、左手首をぎゅっと押さえながら、可愛らしい笑顔を浮かべた。




「本当にかなくんだ。すっごく久しぶりだね」


「……何で、笑ってるんだよ」


「そりゃあ、昔の知り合いに会えて嬉しいから」


「ふざけるな。本気で言ってんならどうかしてる」




マリカ、かなくん。

親しくなければそんな呼び方はしないはず。

だけど、二人はどう見ても再会を喜んでいるようには見えない。



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