猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



柳沢くんは、気持ちを落ち着かせるように一つ深呼吸した。

そして、無言で私の手を引く。




「あ……」




柳沢くんは、もうここには用はない、とばかりにどんどん茉莉花ちゃんから離れていく。


気になった私が茉莉花ちゃんを振り返ると、左手首を押さえたまま軽くうつむいていた。

だけどその後少し視線を上げ、柳沢くんのことをじっと見ているような気がした。




「マリカに何か言われた?」




柳沢くんが私の手を引いてまま聞いた。




「お礼を……」


「お礼?」


「前に、駅前で男の人に絡まれてるところを助けたことがあって。ほら、柳沢くんが動画に残してたあれ」


「……ああ。そういえばどういう経緯で大の男二人相手にしてたのか聞いてなかったけど、マリカを助けてたのか。……はは、どんな偶然だよ」




苦しそうな声に、聞かない方が良いのかなと思いつつも聞いてしまう。





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