猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
ベンチに座って、冬の空気を深く吸い込む。
「でね、さっき言いかけたんだけど。私、この前茉莉花ちゃんと会ったの」
「……聞きたかったことは聞けましたか?」
「ううん。意味深なこと言われて、私と柳沢くんの仲を裂こうとしてることはわかったけど、肝心の知りたかったことは聞けずじまい」
私はふうっと息をついて苦笑いを浮かべる。
「柳沢くんは茉莉花ちゃんと二人で会ってるし、しかもそれ私に隠すし。おかげでずっとモヤモヤしっぱなしでね」
ずっとモヤモヤして、そればっかり考えて、勉強にも手が付かなくて。
……勉強が手に付かないのはいつものことか。
「だけどおかげでわかったんだ。私、……柳沢くんのことが好き。茉莉花ちゃんに取られたくない」
本当はきっと、もっと前から好きだった。
だけど、どこかで自分の気持ちを認めないようにしていた。