猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
なっちゃんに言われて改めて見てみると、確かにチョークで書かれた文字とは質感が違っている。
簡単には消せないようにして、たくさんの人に見せつけようという悪意が感じられた。
「な、なあ香田さん」
一人の男子が恐る恐るといった感じで声を掛けてくる。
「香田さん、柳沢の彼女だよな?……人殺しって……何か、知ってることとか……」
「こんなの信じてるの⁉こんな誰が書いたのかもわからない嫌がらせを⁉」
頭に血が上る感覚がして思わず叫ぶ。
病み上がりに久しぶりに来た学校で、久しぶりに出した大声。何度か咳き込んでしまった。
「葉澄落ち着いて!これ書いた犯人はもうわかってるの。他クラスの男子。今先生に怒られてるところで、好きな女子が柳沢のことを好きだから腹いせにテキトーなこと書いた……って証言もしてる!」
「なんだ、そうなんだ……」
よかった……。
私はホッと胸を撫で下ろした。
だけど、なっちゃんや皆は、険しい表情のままだった。
私は首をかしげる。