猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
「え、もうただの質の悪い嫌がらせだってわかったんだよね……?」
「まあ、そうなんだけど……」
なっちゃんは口ごもって、先ほど私に声を掛けた男子の方を見る。
彼はそれにうなずいて話し出した。
「……オレが最初に教室に来て、これ見つけたんだ。もちろんただのイタズラだって思ったよ。だけど、そのうち何人か来て、その中に柳沢もいてさ。だからオレ、黒板見せながら冗談で『おいおいお前誰殺したんだよ』って言ったんだ」
その現場にいたらしい何人かが、その時の状況を思い出したのか複雑そうな顔をする。
「そしたらあいつ、黒板見て顔真っ青にしてさ。そんでそのまま黙って教室出てったんだよ。しかも戻ってこねえし」
「え……」
「笑って『そんなわけないだろ』って言ってくれりゃあ、それで終わったのによ。……あんな反応されると、やましいことがあるのかもって勘ぐっちまうだろ」