猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
「雨が降る前とか寒いときとか痛い。あと……かなくんのことを思い出すと痛くなる気がする」
その痛みは、想像するしかできない。
私はしみじみと呟く。
「そりゃあ、忘れられないよね。柳沢くんのこと」
「え?」
「柳沢くんのこと、まだ好きなんでしょ?……茉莉花ちゃんなら──」
柳沢くんを茉莉花ちゃんに取られたくない。それは本当の気持ち。
だけど、今の柳沢くんが茉莉花ちゃんのことを思い出して傷ついているのなら。
……私じゃなくて、茉莉花ちゃんの声じゃないと、彼には届かないかもしれない。
「ち、違う!」
いきなり、茉莉花ちゃんが大声をあげた。
「わたし、もうかなくんのこと好きじゃない」
「……え?でも」
「わたしが好きなのは……」
茉莉花ちゃんは緊張気味に声を震わせた。
「葉澄ちゃん、だよ」
「……私?」
「一目惚れ、だったの」