猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め

「マリカが転校してから考えるようになった。どういう人間だったら、自分がターゲットになることなくいじめを止められたんだろうって。で、思いついたのが……今の俺が学校で演じてるキャラ」



人当たりが良くて、王子様みたいな、学校の人気者。




「思いついてすぐ、中学でもそんなキャラを演じるようになった。小心者のくせにすごい勇気だったなって思うよ。周りも最初こそ不審がってたけど……元々この顔だから、すぐ女子にモテるようになった」




自慢なんかではなく、あくまで淡々と語る。

その様子から、柳沢くんにとってそれは全く嬉しいことではなかったんだと伝わってくる。




「しょっちゅう告白を受けるようになって気が付いた。俺のことを好きだと言っていたマリカがあんなことになったせいで、好意を持たれることが怖い。だから全部断り続けた。そうしたらそのうち、家特定されたり物取られたり、変な執着してくる人も出てきて、さらに怖く……気持ち悪くなった」




──柳沢くんはそこまで語ると、口を閉じた。


そして、そっと私の顔をのぞく。