猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



柳沢くんの家に行くのはこれで三回目。

柳沢家の最寄り駅もなんだか見慣れた気がする。




「母さん、連れて来たよ」




柳沢くんは玄関に私を残してお母さんを呼びに行く。彼女を連れて来るということは予め伝えてくれていたみたいだ。

部屋の奥から出てきたのは、この前少しだけ話した美人。

彼女は私を見て目を見開いて。




「この前の奏多のクラスメイトの子……」


「はい。その節は」


「そう、貴女が」




ぽろぽろと涙を流し始めた。




「え⁉あの、大丈夫ですか?」


「ごめんなさい大丈夫。この子が恋人を連れてくる日が来るなんて……感慨深くて……」




柳沢くんは大きな大きなため息をつく。




「こうなると思ったから会わせるの嫌だったんだよ……」


「だって今までうちを訪ねてきた女の子なんて、あなたのストーカーみたいな子しかいなかったじゃない」




柳沢くんのお母さんは、涙を拭って私の手を取った。




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