猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め




「ごめんなさい。お名前聞いてなかったわね」


「香田葉澄です」


「葉澄ちゃん。どうか奏多のことを末永く末永くお願いします」


「母さん、頼むからやめて」




柳沢くんは私を引き寄せつつ、お母さんの手を払う。

お母さんは少し不満げな顔をしてから、私に笑顔を向ける。




「葉澄ちゃん、今日はうちで夕飯食べてってね」


「あ、いえそんな」


「遠慮しないで。私も葉澄ちゃんとおしゃべりしたくて……」




と、柳沢くんのお母さんのポケットでスマホが鳴った。

しぶしぶといった様子で電話に出る。




「はいはい……え?発注ミス⁉……わかった今から行くから待ってなさい」





大きなため息と共に電話を切り、私たちを見て言った。




「部下がちょっとやらかしたみたいだから今から出かけるわ。なるべく早く帰ってくるから、奏多、夕飯まで葉澄ちゃん逃げないよう捕まえといてね」


「はいはい」


「えっ」




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