猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
何かおかしかったかな。
首をかしげた私に、なっちゃんは安心半分呆れ半分という感じの顔をした。
「この天然さもマイナスイオン系女子の所以よね……。嫌がらせした奴が逆に不憫な気がしてきたわ」
「だけどそういう天然さも、ハスの魅力の一つだと思うよ」
休み時間中のなっちゃんとの楽しい楽しい女子トークに割り込む、甘くて優しい男の声。
確認するまでもない。ここ数日で胸やけするほど聞いた、柳沢くん(猫かぶりver.)の声だ。
ちなみに柳沢くんは私のことを「香田さん」でも「葉澄」でもなく、「ハス」と呼ぶことに決めたらしい。この呼び方は皆の前でも二人のときでも変わらない。
「柳沢、隙さえあれば惚気るじゃない」
なっちゃんはにやりと笑ってから、すぐに険しい表情をつくる。
「ていうか柳沢。あんたのせいで葉澄が無駄に目立って嫌がらせされてるんだから、ちゃんと守ってあげなさいよ。……まあ、靴箱に虫程度の嫌がらせは嫌がらせだって思ってないみたいだけど……。でもねえ、確かシャレにならない女が一人いるのよ」