猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
そう思って、不安定な足場の上から倉庫の中を見渡す。
その時だった。
十数分前に聞いたのと同じような、ガチャンという音がした。
あれ?誰かが鍵を開けた?
でも今日は体育倉庫を使う運動部は休みなんじゃなかった?
頭にそんな疑問が浮かんだのと、扉が勢いよく開かれたのはほぼ同時だった。
「あれ、柳沢くん……?」
扉の向こうにいた柳沢くんは、何故かずいぶんと息を切らせていた。
そしてその姿を確認するために無理な体勢で振り返ったからか、私の立つ不安定な足場がグラっとした。
「うわっ⁉」
「ハス!」
ふわっと中に浮く感覚。
私は強い衝撃に備えて目を閉じる。
──でも、伝わって来た衝撃は想像よりずっと軽かった。
「あっ……ぶな……」
恐る恐る目を開けると、柳沢くんのとっても美しいお顔がずいぶんと近くにあった。
そしてすぐに、あの足場から落下した私を受け止めてくれたんだと気が付く。