猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
「なかなか良い反射神経と筋力だね、柳沢くん」
「……まず普通に『ありがとう』とか言えないわけ?」
「あはは、そうだね。ありがとう」
私はお礼の言葉を言ってから続けて聞く。
「どうしてここに?」
「たまたま聞いたんだよ。岸井って女子たちが『香田葉澄を閉じ込めた』みたいな話してるとこ。断片的にしか聞こえなかったから探し回らされたけど」
なんと。それで息切れしてたんだ。
「悪かった」
柳沢くんが少し目を逸らしながら言った。
何に対しての謝罪なのかわからなくて、私はぱちぱちと瞬きする。
「『責任を持って俺が守る』なんて言ったのに全く守れなくて、悪かった」
「……えっと、そんなこと言ってた?」
「言ったでしょ、中山さんから岸井のこと聞いた時に」
中山さん──なっちゃんから岸井さんの話を聞いたとき。
ああ、言われてみれば。だけどあの時……。