猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
実はさっきからずっと、受け止められたときのまま──いわゆるお姫様抱っこ状態なのだ。
「私割と重いでしょ?」
「そうだね、見た目の割に。脂肪より筋肉の方が重いらしいもんね」
正直だな。誰が筋肉女だ。
ようやく安定した地面に足を付けることができた私は、埃だらけになったスカートを軽く払う。
しばらくぶりの外の眩しさに目を細めて、大きく息を吐いた。
「柳沢くんが来てくれて良かった。あの窓の格子外すの難しそうだったし、もう扉壊して脱出するしかないかと思った」
「……今それ聞いて、ここまで走ってきて良かったって心から思ったよ」
柳沢くんはそう引きつった笑みを浮かべてから、ふと真顔になった。
「ねえハス。あさって空いてる?」
「あさって?」
明後日は土曜日。特に用事はない。
そのことを伝えると、柳沢くんは満足そうにうなずいた。