猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



「いや、俺も今来たとこ……って言うのが正解?」


「あ、いえ、普通に怒ってもらっても……」


「遅い。遅れそうなら連絡入れて」


「ハイ……」




そりゃあそうだな。

この服装で一番速く走るにはどうしたら良いかを試すのに夢中で忘れてた。




「じゃあ、ほら」




柳沢くんがそう言って、私の前に右手を出した。


……ええっと、この手は?

私は少し考えてから、バッグの中から飴を二つ取り出して、柳沢くんの手に置いた。




「いや何でだよ」


「えっ⁉遅れてきたお詫びを要求されてるのかなぁと」


「そんなわけないでしょ。しかもハッカ味って。……そうじゃなくて!手!繋ぐ!」


「は、はい!」




慌てて手をのせると、私の手は柳沢くんの手にぎゅっと絡めとるように握られた。

これはいわゆる恋人つなぎというやつでは。




「そういえばどこ行くの?」



少し緊張してきたので紛らわすために聞いてみる。


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