猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
私はぎゅっと唇を噛んでうつむいた。
最悪。最悪。
他の人が相手なら、こんな言葉、聞き流すことも冗談で返すことだってできる。
だけど、この男にだけはそれができなかった。
『はははっ、冗談キツイって。香田のこと、女子として見れる男とかいねーだろ。野生動物が調子乗んなっつーの!』
……山内が、勇気を出して告白をした私に対して言ったその言葉は、いまだに耳にこびりついている。
あの時の悔しさをバネに強いことを隠して可愛く着飾って、女の子らしくなったことで自信は付いたはずだった。なのに、今彼を前にして、何故か震えが止まらない。怖い。
「ハス、この店員さんとは知り合い?」
柳沢くんが、王子様モードの優しい声で聞いてきた。
おかげで少しだけ落ち着きを取り戻せた。私は無理やり笑顔をつくってうなずく。
「うん。中学の時の同級生だよ」
「どーもどーも。香田の元同級生でーす。同級生っつっても、好きになられて告白されたり、ちょっと色々あった同級生だよなぁ香田?」