猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



山内は何故か勝ち誇ったような表情をしている。



やめて。中学時代の私を暴くことの、何がそんなに楽しいの?

悔しくて、気分が悪くて、私はまた唇をぎゅっと噛んだ。




「ふーん。なるほど」




静かに聞いていた柳沢くんが呟いた。

と思えば、おもむろに水の入ったコップを持ち上げて、中身を一気に飲み干した。

そして、ガチャンと大きな音がたつぐらい勢いよくコップをテーブルに置いて、顔を上げる。

その顔は、先ほどと変わらない優しそうな笑顔のままだ。




「さっきから聞いてもないことよくもまあベラベラとしゃべるなあ、クズが」


「は……?」




その優しい笑顔に似つかわしくない言葉が聞こえてきて、不本意なことに「は……?」という声が山内と被ってしまった。


な、なんか王子様モードだった柳沢くんが、いきなり素モードに変わったんだけど?

なんとなく焦りを覚えた私は、柳沢くんに耳打ちする。




「や、柳沢くん!猫被るの忘れてるよ!素が出ちゃってる!」


「なんでこんなクズに愛想よくしないとだめなわけ?」



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