猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
「えへへ、心配してくれてたんだ」
「少しだよ。本当に少し」
「あのね、今となっては山内のどこに惹かれたのかもよくわかんないんだ。顔だって柳沢くんの方がかっこいいもん」
「なっ……っ、当然だ」
「あと、柳沢くん『変わる前の状態が本性ってわけじゃない』って言ってたでしょ?あれちょっと嬉しかった」
山内は、中学時代の「太り気味で男みたいな見た目、さらに力が野生動物並みに強い香田葉澄」こそが本性なんだと言っていた。
……力が強いことについてはまあその通り。
でも、外見に関しては違う。美容なんかに気を使って女の子らしい格好をするのが、今の私にとっての当たり前。気を抜いたって、もうあんなボサボサで清潔感も今一つで男みたいな格好には戻らない。
だから柳沢くんの言葉は、変わった今の姿も本当の姿だって認めてくれたみたいで嬉しいんだ。
「ありがとう」
今度は私が柳沢くんの顔をのぞき込んで言う。
嬉しさから、自然と口元が緩んで笑顔が浮かんだ。