猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め




なっちゃんは彼氏とデートだということで、私は仕方なく一人で寂しく帰ることにした。


だけど、昇降口に来た辺りで気が付いた。


国語の問題集、教室に忘れてきた。

提出期限は明日までだから、取りに戻らないとまずい。


そう思って慌てて戻ってきた教室に入ろうとしたとき、鉢合わせてしまったのだった。




「柳沢くん!あ、あの、ずっと好きでしたっ!」




さっきまさに、なっちゃんとの話題に出ていた正統派王子様系男子、柳沢くんが告白されている場面に。




……ど、どうしよう。これは入りにくい。出直すべき?

でも、国語の問題集取りたいし。……しょうがない、このまま待とう。

カップル成立の瞬間が見られるかも~なんて野次馬根性からではなくてね。早く問題集を取りたいだけ。


私は自分にそう言い聞かせると、じっと息を殺して成り行きを見守る。


教室の中は、しばらく無言の時間が流れていた。


だけどやがて、柳沢くんがいつもの優しそうな声で言った。



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