猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
前から気になっていたし、本人に尋ねたことも何度かあった。
──柳沢くんはどうして、素の自分を隠してるの?
好意を寄せられるのが苦手なら、あんな風に優しくて完璧な王子様みたいに振る舞わない方が良いんじゃない?
それに対する答えは決まっていた。
こう振る舞った方が、人間関係がこじれないから。人間関係がこじれるのと告白を断るのを比べたら、面倒なのは圧倒的に前者。
きっとそれは本音。でも何となく、それだけじゃない気がしていた。
柳沢くんの幼なじみである高森くんなら、何か知っているかもしれない。
だけど、どう聞けばいいか迷っているうちに、目当ての印刷室に到着してしまった。
「奥のコピー機使いましょうか」
コピー機の使い方を丁寧に教えてくれる高森くん。結局尋ねるタイミングを失ってしまった。
印刷が始まって、機械がガ―っと音を立てている間、私はチラチラと彼に視線を送る。
そのことに気付いたからなのかどうかはわからないけど、高森くんはコピー機のトレイの辺りに目を向けたまま、ぼそりと言った。