猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
「奏多がまた特別な存在をつくることができて、本当に良かったと思っています」
意味がよくわからなくて「え?」と聞き返したものの答えは返ってこなかった。
「はい、これで印刷は完了です。僕は教室に戻りますね。香田さんと二人でいるところをあいつに見られたら面倒なので」
「面倒?何が……まあいいや。教えてくれてありがとう」
私は会釈して背を向けた高森くんを見送る。
だけどふと思いついて、呼び止めた。
「ねえ高森くん」
「……?はい?」
「話し方を変えた理由、『孤立するのが嫌だったから』って言ってたよね。だけど本当は、周りを怖がらせるのが申し訳なかったから……なんじゃない?」
「え……」
高森くんは、戸惑ったように眼鏡をくいっと持ち上げ、瞬きをした。
根拠なく言ったわけではない。
「高森くん、昼休みはわざわざあの空き教室に行って、一人で過ごしてるんだよね」