猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



もしかして、さっき受け取った手紙、このまま教室で読むつもりなのかな。だとしたら邪魔しちゃだめだよね。

……でも国語の問題集取りたいな、早くしないと乗る電車が遅くなっちゃうし。


こうなったら柳沢くんに気付かれないようにこっそり教室に入って、こっそり自分の席まで行って問題集を回収して、またこっそり出てこよう。

幸い私の席は、真ん中の列の一番後ろ。柳沢くんの席からは遠い。


よし、行ける。

私は教室の後ろの扉から物音を立てないように教室に入ると、姿勢を低くしたままそっと自分の席に近づく。

あったった。問題集発見。

これまたそっと問題集を抜き出して、ちらりと柳沢くんの方を見る。

よかった、手紙に集中してこっちに気付いている様子はなさそう。


そう思ったその時だった。



「ちっ……うぜぇ」



誰かが舌打ちをして悪態をつくのが聞こえた。

さすがに幻聴だと思った。


だって、今教室にいるのは私と柳沢くんだけ。

まさかあの王子様が舌打ちなんてするはず……。



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