猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め
「ハス、空手の道着似合ってるね。いつもは可愛いハスがかっこいいの、すごく新鮮だよ」
威力満点スマイルを浮かべながら、今日も今日とて王子様モードを遺憾なく発揮する柳沢くん。
いつも通り、カップルらしくイチャイチャしている様子を周りにアピールする。
──その様子に、私は何故だかホッとした。
今この教室で、柳沢くんの本性を知っているのは私だけ。
……あ、わかったモヤモヤの正体。
お互いの秘密を共有したりして親密になった柳沢くん。この学校で一番仲が良い友達のなっちゃん。
自分と仲の良い人二人が、自分抜きで仲良くしたらモヤモヤするもんね。
私も仲間に入れてよー!って思うもんね。
なーんだ。それだけのことじゃん。
びっくりした。付き合ってるフリに慣れて、本当にカップルになったような気分になっちゃったのかもと思った。
そんなこんなで余裕を取り戻した私は、広い心でカップルの演技に加担してあげることにした。