もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
「いや、水辺は獣が集まりやすい。ここがちょうどいいと思う」
「グランツ様にもお会いできましたもんね」
「えっ、あ……そ、そうだな」
グランツはシエルの不意打ちにうろたえながら、びしょびしょに濡れたミュンの耳の後ろを掻いた。いつもならきゅうきゅう鳴いて甘えるのに、今はぐったりしている。
イルシャも同じ状況で、娘に冷たい水の大半を譲りながらも、荒い息をこぼしていた。
「もう少し領地から近ければ、氷を持ってこられたんだが……。氷の魔法は扱えないのか?」
「どうやればいいのでしょう。いまいち想像できません」
重ねた手のひらから水をしたたらせ、シエルは困った様子で言う。