もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 本当にわからないから尋ねているのに、グランツの表情がおもしろいぐらい変化する。戸惑いと恥じらい、そして罪悪感と、なぜか期待が見え隠れした。

 シエルはなかなか答えないグランツを急かさず、彼を見つめるだけで言葉を待った。それが彼の良心をちくちくと刺激し、隠そうとしていた心を暴く。

「キ……」

「き?」

「キスを……しようとしたんだ」

 キス、とシエルが繰り返す。

「そんな目で見ないでくれ……」

 唇を重ねる行為の意味さえわからないシエルの純粋な視線に耐えきれず、グランツは片手で口もとを覆って彼女から離れようとした。

 シエルはそれを許さず、逃げようとしたグランツの服を掴む。

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